エノコログサと、ムラサキツメクサ

家を出てすぐの通り道の茂みから取って来たエノコログサと、ムラサキツメクサ。

その茂みの奥の木にはハチの巣があって、そのマーブル色の巣に目をやれば、働きバチが忙しそうに飛んでいく姿が見られる。スズメバチだった。

最初はおどろいて、どうしたらいいかと妻と話したり、頭を悩ませたりもした。たとえば管理事務所に連絡して撤去してもらったほうがいいのではないかとか。

ただ、迷いながらしばらく観察していると、スズメバチといっても若干小ぶりで、こっちに向かってくる様子はない。ふつうにどこかエサを取りに飛び立って、また帰って来て巣に入るだけのようだ。よっぽど、こっちからから近づかなければおそわれるような感じはしなかった。まあ、ハチだってせっかく家を作ったんだし、なにもことさら撤去することもないような気もしてくる。とりあえず気をつけながら見守っていこうということに落ち着いた。

それいらい、多少の親近感をもってハチが飛んでいるのを遠くから見ていた。いつも入れ代わり立ち代わり巣に入ったり出て行ったりと、働きバチの名の通り働きぶり。楽しみですらあった。

けれど今日、ふと遠目に見ると、巣がなくなっているように思えた。おそるおそる茂みの木の枝に近づいて確認してみる。やっぱりなにもない。たぶん、だれかが巣を見つけて、こりゃいかんと撤去してしまったんだろう。すこしホッとすると同時に、どこかさびしい気持ちになった。

僕と妻は、肩を落としぼんやりとその場にたちつくしていると、ハチが一匹返ってきた。たぶん働きに出ていたおかげで、助かったのだろう。でも、帰ってくる家はもうない。そいつは巣が撤去されたのを知らないからか、辺りをえんえんと飛び回っていた。やっぱりかなしい。