House with the stairs 階段の家

House with the stairs
階段の家


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House with the stairs
階段の家

だんだんと、空が高く、風も冷たくなってきました。そろそろ、えんとつ掃除の季節です。コンロで温かいスープを毎日つくるため、えんとつを綺麗にするのです。えんとつ掃除は、顔も体も真っ黒になります。そとの階段で屋根までのぼっていかなくてはなりません。ほんとうは気が重いのですが、おかずがたくさんはいったおべんとうを持って、行くことにしました。屋根の上でひろげるお昼ごはんは、この上なくおいしいはずですから。

玄関を出ると犬のコタロウが階段でひるねをしています。そっと通り過ぎようとしたら、おべんとうのにおいに目を覚ましました。バウっとほえると、うれしそうについてきます。
さらに階段をのぼっていくと、となりの家の猫のスズタロウがひるねをしていました。まるでえんそくにいくようなコタロウの息づかいで目を覚ますと、リンリンリンリンと、鈴を鳴らしながらスズタロウもついてくるのです。えんそくじゃないよ、えんとつだよと思いながら階段をのぼりました。
さあ、もうすぐ屋根の上です。そこでも近所のドバトがひるねをしていました。こいつは物音がすると、いつも、えさと思ってちかづいてくる食いしんぼうです。いつのまにか、ボッボッボッと、足元にまとわりついています。集まった動物たちを見るとまるでピクニックのようでした。しかし、こんな見晴らしのいいところにいると、そんな気分になってくるのです。えんとつ掃除の前におべんとうを広げてしまいました。
「いただきます」「ボッボ」「にゃー」「バウっ」
なににもじゃまされない空の下で、ごはんをたべるのは、なんて気持ちがいいんでしょうか。すると頭もさえて、いいアイデアが浮かびました。よし!こいつらにおべんとうを分けるかわりに、えんとつ掃除をやってもらおう。狭いえんとつの中は、からだの小さい彼らの方がちょうどよいのですから。これで自分の身体がよごれることもありません。
「おひるごはんを食べたら、おまえたち、えんとつの掃除をたのむぞ!」
「ボッボ」「にゃー」「バウっ」
たんじゅんで、ものわかりの良い彼らをみると、笑みがおさえられません。身体はよごれていませんが、もう心は真っ黒です。これで、えんとつ掃除はすんだようなもの。おべんとうを平らげると、ごろりと横になって、ひるねをむさぼりました。

どのくらいねむったのでしょうか。太陽が真上をとおりすぎて、傾きかけてます。ちょっと眠りすぎたかもしれません。でもだいじょうぶ、えんとつ掃除は動物たちにたのんでありますから。
「なあ、おまえらよ」
しかし、まわりを見わたしても、屋根の上には誰もいません。煙突をのぞいてもススだらけのよごれたままです。ははん。これは逃げられましたね。あいつらをさがしてひっぱってこようかしら。いや、もう日が傾いています。時間がありません。しかたがなく自分でえんとつの掃除をすることにしました。

身も心も真っ黒になって、えんとつをきれいにすると、もう外は真っ暗です。疲れはてて階段を下りて行きました。
するとドバトがのっそりねています。マメでもぶつけてやろうかと思いましたが、こいつはただの食いしんぼう。もともと、えんとつ掃除なんてできるはずがありません。そう思うと怒る気もなくなりました。さらに階段を降りて行くと、スズタロウが丸くなってねむっています。シッポを踏みつけてやろうかと思いましたが、こいつは気まぐれなお隣の猫です。いつだって言うことを聞いたためしがありません。まあ、しかたがないかと思いながら階段を下りて行きました。玄関の前ではコタロウが大いびきで寝ています。主人を置いて行きやがってと、こんどこそ耳をひっぱってやろうかと思いましたが、気の抜けた寝顔を見ていると怒りがどこかへいってしまうのです。そっとまたいで、家の中へ入りました。さあはやく、お風呂に入って、真っ黒によごれてしまった心と身体をきれいに流したいのです。
 

 

 


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